2024.01.5
イギリス
コイン解説&写真
根強い人気のイギリスコイン「イギリス ヴィクトリア女王即位10周年のゴチック・クラウン ①」
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
今回は根強い人気のイギリスコイン『イギリス ヴィクトリア女王即位10周年のゴチック・クラウン』をご紹介します。
イギリスのアンティークコインには人気が高いものが多く、そのうちの一つが通称「ゴシック・クラウン」と呼ばれる銀貨です。一般的に銀貨は金貨よりは低い価格で取引されますが、ゴシック・クラウンは金貨にも引けを取らない高値がついています。
この記事では、ゴチック・クラウンの特徴や人気の秘訣を解説していきます。コインをコレクションするだけでなく、コインが象徴する歴史についても理解を深めていきましょう。
ヴィクトリア女王即位10周年のゴチック・クラウンの基本情報
イギリスで発行されたヴィクトリア女王即位10周年のゴチック・クラウンの基本情報について、基本情報を整理しておきましょう。
・国:イギリス
・発行年:1847年
・発行枚数:8000枚(プルーフ)
・素材:銀
・直径:約38mm
・重量:約28g
・表面:王冠を被ったヴィクトリア女王
・裏面:十字型の紋章
・参考取引価格:50万円~600万円
コインをデザインしたのは、「ウナとライオン」など人気の高いイギリスのコインを手掛けたウィリアム・ワイオンです。非常に細かいところまで繊細なデザインが施されており、まさにワイオンらしいコインなのですが、わずか直径4センチにも満たないコインにここまでの装飾を行うとは、とため息が出てしまうほどの作品です。ゴチック・クラウンが「世界一美しい銀貨」と呼ばれているのも納得の完成度です。
「ゴチック・クラウン」と呼ばれる理由
このコインはヴィクトリア女王の即位10周年を記念して発行されたコインですが、通称「ゴチック・クラウン」と呼ばれています。なぜ「ゴチック」なのか、というと、コインに刻印された文字のフォントが「ゴシック体」であることに由来しています。
コインの表面の文字は「ブラックレター」と呼ばれる書体で、イギリスの近代コインでは初めて採用されました。ちなみに同様にゴシック体が採用されたコインには、1851年から発行された「ゴチック・フローリン」があります。(左:ゴチック・クラウン 右:ゴチック・フローリン)
「ゴシック体が使われたクラウン銀貨」であるため、通称「ゴチック・クラウン」と呼ばれています。
表面・裏面のデザイン
ゴチック・クラウンは非常に繊細なデザインが特徴です。ワイオンが手掛けたコインならではの美しさで、他のコインでは類を見ません。
表面には、王冠を被ったヴィクトリア女王がデザインされています。裏面には十字が描かれ、イングランド、スコットランド、スコットランドを表すモチーフが描かれています。
3頭の獅子はイングランドを、1頭の獅子はスコットランドを、ハープはアイルランドを象徴しています。また、バラはイングランド、アザミはスコットランド、クローバーはアイルランドを象徴する花です。
特に裏面の細かいデザインは圧巻で、たった4センチにも満たないコインというキャンバスに、6つものモチーフを盛り込んでいるのです。詰め込んでいるわけでもなく十字型に均整の取れた配置をしており、かつ細かいところまでデザインしているので、「世界一美しい銀貨」と呼ばれるのも納得です。
表面のヴィクトリア女王の王冠や衣服も、細かなところまでデザインされています。王冠に埋め込まれた宝石が1つ1つ浮き上がってくるようなデザインなど、逸品としか言いようがありません。
状態・価格について
ゴチック・クラウンはヴィクトリア女王の即位10周年記念のコインです。そのため記念コインとして見る方もいますが、当時はあくまでも流通用に発行されたため、使用された形跡が残っているものも多いです。よって、未使用に近い綺麗な状態のコインから流通した跡があって汚れが目立つコインまで、状態がさまざまです。
また、銀の性質上、変色やサビも出てきます。使用していないコインでも、変色が見られるため「新品同様」ではないケースが非常に多いです。ただし、変色の具合が美しいとそれもまた価値になるので、「変色した銀貨が意外と高く取引されている」ということもあります。
そのため、グレードと価格が必ずしも比例するわけではありません。取引価格の幅が広く、概ね50万円~600万円の間で取引されているのもゴシック・クラウンの一つの特徴と言えます。
バリエーションについて
1847年に8000枚が発行されましたが、1853年にもわずかに追加発行されています。1853年のものはさらに数が少なく、市場にはほとんど出てきません。
場合によっては、1853年のゴチック・クラウンの方が高値で取引されることも考えられます。目にすることがあったらそれだけでも奇跡のような代物なので、ぜひ手に入れたいところです。
また、コインのエッジ(縁)の違いによっても希少価値がやや異なります。コインのディーラーですら、一度も見たことが無いタイプのコインもあるのです。
次回はヴィクトリア女王についてお伝えします。
みなさんにアンティークコインで幸あれ!