希少価値が非常に高いコイン「スペインイサベル2世 20レアル銅貨試作貨①」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

アンティークコインには、もともと発行枚数が少なく希少価値が非常に高いコインがあります。そのうちの一つが試作貨で、枚数が少ないことや、流通したコインとは異なるデザインの場合があることなどから、コレクターからの人気が非常に高いコインです。

この記事では、スペインのイサベル2世の肖像が刻まれた「20レアルの試作銅貨」をご紹介します。当時のスペインの歴史的な背景とあわせて、コインに対する理解を深めていきましょう。

スペインイサベル2世 20レアル銅貨試作貨の基本情報

スペインで発行されたイサベル2世の20レアル銅貨（試作貨）について、基本情報を整理しておきましょう。

・国：スペイン
・発行年：1860年代
・発行枚数：不明
・素材：銅
・表面：イサベル2世の肖像
・裏面：紋章

今回ご紹介するイサベル2世の20レアル銅貨は、試作貨なので枚数は非常に少ないです。流通用のコインに比べ、希少価値は抜群に高いと言えます。

試作貨は流通用のコインを作る前段階に作るサンプルのようなもので、コインの出来栄えを確認するためのものです。枚数が非常に少ないことに加え、実際には流通しなかったレアなデザインのコインもあるので、コレクターにとってはたまらない逸品です。

イサベル2世について

イサベル2世の治世は、大国スペインの近代化と切り離すことができません。イサベル2世の父親であるフェルナンド7世の治世から解説していくと分かりやすいので、少し時代をさかのぼって歴史を俯瞰していきましょう。

ナポレオンのスペイン遠征

フランス革命後にフランスで実権を握ったナポレオンは、ヨーロッパで影響力を拡大していきました。スペインも大きな影響を受けており、無関係ではありません。

ナポレオンの皇帝即位に際し、フランスがヨーロッパを支配することを避けるため、イギリスは対仏同盟を呼びかけました。それに対し、フランスはスペインと組んで艦隊をドーヴァーに派遣します。フランスは海戦に弱く、スペインと組むことでイギリスの海軍を破ろうとしたのですが、トラファルガー海戦ではイギリスが勝利します。

同じころ、スペイン・ブルボン朝では国王カルロス4世と皇太子フェルナンド（後のフェルナンド7世）、宰相のゴドイがフランスとの関係をめぐって対立していました。最終的にはカルロス4世と宰相を追放してフェルナンドが国王に即位したのですが、民衆の暴動なども発生し、スペインは混乱状態に陥りました。

1808年、混乱に乗じたナポレオンはフランスの将軍を派遣します。スペインの各地で民衆が蜂起しましたが、マドリードではフランス軍が数百人の民衆を銃殺しました。スペインの画家であるフランシスコ・デ・ゴヤが『1808年5月3日』という絵画で、一般の民衆が装備を固めた軍人に銃殺される悲惨な場面を描いています。（画像：1808年5月3日）

スペイン独立戦争と王政復活、立憲革命

スペインに侵攻したナポレオンは、スペインの国王に自分の兄であるジョゼフを置いて統治しようとしました。しかし民衆が抵抗を続け、ゲリラ戦術でフランス軍を悩ませます。ジョゼフはスペイン全土を統治することができず、また1812年にフランスのロシア遠征が始まって兵力が割かれたため、フランスにスペインを支配する力は無くなりました。1813年にジョゼフはフランスに退きます。

ナポレオンはロシアでも敗北し、力を失っていきました。没落後のウィーン体制は、ヨーロッパをフランス革命以前の体制に戻すことを掲げており、スペインでも絶対王政が復活します。

国王に君臨したフェルナンド7世は、スペイン1812年憲法はフランス風の自由主義に基づいているとして廃止し、絶対王政を復活させました。

しかし、自由主義派の秘密結社の抵抗に遭います。1820年、ラテンアメリカに出航するためにアンダルシアで待機していたスペイン海軍の兵士たちが、憲法の復活を求めて蜂起したのです。中央部の兵士も蜂起し、これに驚いたフェルナンド7世は憲法の復活を認めざるを得なくなりました。（スペイン立憲革命）

こうして立憲制が始まり、カトリック教と異なる宗派を裁く異端審問所を廃止したり、経済の自由化を行ったりしました。しかし、保守的な農民からの反発を招く形になり、国内は不安的化します。自由主義者たちも分裂し、これを好機ととらえたヨーロッパ諸国はフランスにスペインを攻めるよう頼み、スペインの自由主義政府は潰されてしまいました。

同時期にスペインが植民地化していたラテンアメリカ諸国が独立します。スペインは広大な領土や市場を失うことになりました。

次回はイザベル２世の即位後についてお伝えします。

みなさんにアンティークコインで幸あれ！