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2024.04.22

コイン解説&写真

近代

スペイン

希少価値が非常に高いコイン「スペイン イサベル2世 20レアル 銅貨 試作貨②」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に引き続きコレクターからの人気が非常に高いコインの1枚、スペインのイサベル2世の肖像が刻まれた「20レアルの試作銅貨」をご紹介します。

コインの基本情報はこちら。

イサベル2世の即位

1833年にフェルナンド7世が亡くなると、遺言どおりイサベル2世が女王として即位します。しかし、スペイン・ブルボン朝の成立と同時に導入されたサリカ法により、王位継承は男系しか認められなくなっていました。(サリカ法が成立する以前は女系も王位継承でき、イザベル1世の即位など前例はあります)

そのため、フェルナンド7世の弟であるカルロスがイサベル2世の即位に対して反乱を起こします。カルロスを支持した人々はカルリスタと呼ばれるため、この内戦はカルリスタ戦争と呼ばれています。

1833年当時、イサベル2世は3歳だったため、母親のマリア・クリスティーナが摂政として政治の実権を握ります。保守的なカルリスタに対抗するため、マリア・クリスティーナは自由主義勢力と連携を深めました。マリア・クリスティーナ側は軍隊や宮廷など強大な勢力を味方につけていたため、ほとんど彼らが優位に内戦を制し、カルリスタは敗北します。

しかし、カルリスタが敗北するとマリア・クリスティーナは今度は自由主義勢力を抑圧し、権力を振るおうとしました。結果として軍隊の蜂起が繰り返され、スペインの情勢不安は長い間にわたって続きます。

九月革命とイサベル2世の亡命

イサベル2世は1843年に成人し、自分が政治の実権を握れるようになりました。しかし、気の赴くままに大臣を任命したり、私生活の乱れなどがあって、軍人たちからの信頼は失われてしまいます。

1868年、軍や進歩派がクーデターを行い、イサベル2世はフランスに亡命します。自由主義勢力は基本的人権の保障や男子普通選挙の導入などの改革を行い、これはスペイン九月革命と呼ばれています。

その後、イサベル2世は息子のアルフォンソ12世に王位を譲りましたが、王位継承をめぐってフランスとプロイセンが介入しています。両国の対立は深まり、普仏戦争のきっかけの一つにもなりました。

まとめ

スペインはフランスなど他の大国からの介入を受けたことや、内戦やクーデターが続いたことなどから、非常に複雑な歴史を持っています。

アンティークコインは、そのような複雑な歴史をも1枚で象徴してしまう、貴重な存在です。試作貨は流通用のコインと違い、枚数が少なく希少性も高いので、コレクションに加えることを検討していただければと思います。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!