2023.08.18
古代
資産としてのコイン
コイン解説&写真
【価格上昇する古代コイン!】そこには定義がある!!
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
アンティークコイン投資といえば、19世紀頃のイギリスの金貨が人気でしたが、最近では古代ギリシャや古代ローマなど古代のコインに注目が集まっています。紀元前に発行されたコインが現存していることも驚きですが、高値で取引される投資対象としても人気があるのです。
とはいえ、古代コインはこれまであまり注目されて来なかった商品です。最近になって値上がりしている理由はなぜなのか、価格が上昇しやすいアンティークコインの特徴から読み解いていきましょう。
価格が上昇しやすいアンティークコインの特徴
古代コインに限らず、以下の3つの特徴があるコインは価格が上昇しやすいです。値上がりする古代コインを見極めるポイントとして特に重要なのが、2と3の特徴です。これらを満たすコインは値上がりしやすいので、それぞれの特徴について詳しく学んでいきましょう。
1. 発行枚数が少ない(希少性)
価格が上昇しやすいコインには、発行された枚数が明らかで、かつ少ないという特徴があります。イギリスのコインの価格が高騰してきたのは、発行枚数が明確に分かっている背景があります。その中でも数が少ない記念コインなどが特に値上がりしているのです。
一方、古代コインは記念として発行されたものではなく、一般的に使われる貨幣として鋳造されたものです。そのため、発行枚数は非常に多いと考えられます。
また、流通していた古代には枚数を管理されていなかったため、全体の発行枚数がいくらなのか不明確です。このような特徴のため、これまで投資対象としての魅力に欠けていました。今後価格が上がる古代コインを発行枚数から探るのは難しいでしょう。
しかしイギリスのコインが高騰してアンティークコイン投資全体に光が当たったり、他に投資対象になるコインが探されたりする中で、古代コインの価格も上がってきています。これから解説する2つの特徴に当てはまる古代コインは価格が上がりやすいと考えられるので、参考にしていただければと思います。
2. 鑑定のグレードが高い(状態)
アンティークコインの品質は、鑑定機関によるグレードで保証されます。PCGS社またはNGC社の鑑定で本物と保証され、またグレードの高さが価格を決める一つの要素になります。
古代コインは紀元前6世紀頃に作られたコインなど非常に古いものなので、19世紀のイギリスの金貨と比べたらグレードは下がってしまいます。しかし、貴重なMSクラス(流通用に作られたものの、実際には流通しなかった未使用の美品)はかなり価格が高騰していますし、売り出されるとすぐに買われてしまう代物でもあります。
古代コインだと、VFクラス(極美品)でも十分な値上がりが期待できます。グレードが高いに越したことはありませんが、古代コインに新品同様のピカピカの美品を求めるのは現実的ではないので、VF以上を目安に高いグレードのコインを狙っていくのが良いのではないでしょうか。
3. 欲しがるコレクターが多い(市場性)
コインの価格は、最終的にはコレクターがいくらまで出せるかに依存するので、欲しがるコレクターが多い人気のコインほど値上がりしやすいです。どのコインが人気になるかは予測しにくく難しいのですが、需要を予測するのがアンティークコイン投資の一つの醍醐味であり、とても面白い特徴でもあります。
コレクターはあらゆることを考えてコインを買うかどうか決めるのですが、決め手になりやすいのは好みのデザインであるかどうかと、歴史的な価値が高いかです。この2つを満たしたコインに所有する喜びを感じる人が多いのは、確かに共感できます。
デザインの観点で言うと、古代コインは将来性の高い大いなる有望株です。古代ギリシャの素朴な印象のデザインは、独特の愛らしさがあってじわじわと人気を集めているからです。19世紀イギリスの技巧を凝らしたデザインも美しいですが、古代ギリシャの可愛い簡素なデザインにも注目が集まっているのです。
また、古代の歴史は知らない人がいないほど有名なので、歴史的な価値も高いです。古代ギリシャは古代の四大文明の一つですし、古代ローマは領土を拡大してヨーロッパ・地中海全体を治める強大な帝国を築き上げました。古代マケドニアのアレキサンダー大王もとても有名ですよね。
このように皆が知っている歴史を代表する古代コインは価格が上がりやすいです。例えば、女神アテナと女神ニケが描かれたアレキサンダー大王時代のスターテル金貨などは人気が上がっています。コインの価格はコレクターのニーズによって決まるので、デザインが優れているものや歴史的価値が高いものは価格が上がりやすいです。
古代コインが人気の理由をまとめると、コレクターの所有欲をかきたてる歴史のロマンが詰まっているから、と言えるでしょう。さらに鑑定のグレードが高い品物となれば、今後の値上がりも期待できます。
価格が上昇している古代コイン
ここからは、実際に価格が上昇している古代コインの実例を見ていきましょう。
古代ギリシャ:テトラドラクマ銀貨
ドラクマとは通貨の単位(円やポンドのようなもの)で、テトラドラクマ銀貨は4ドラクマの価値を持っていた貨幣です。紀元前5世紀に鋳造されたもので、表面には女神アテナの肖像、裏面には目が大きなフクロウがデザインされています。素朴で絵心のあるフクロウの可愛さが評価されてか、じわじわと人気が上がっているコインです。
テトラドラクマ銀貨をよく見ると、女神のヘルメットのたてがみやフクロウの体の模様が非常に細かく表現されていることが分かります。細かい模様がはっきりしているコインの方が、高値がつきやすい傾向にあります。
グレードが低いテトラドラクマ銀貨でも、模様がはっきりしていれば上のグレードの銀貨より高い価格で取引されることもあるほどです。VFクラス(極美品)でも50万円程度の値が付いています。
実際、2009年から2019年のテトラドラクマ銀貨の値上がり率を調べると、概ね3倍程度の値上がり幅となっていました。グレードによって値上がり幅が異なるので一概にまとめては言えないのですが、高値がつきやすいコインと言えるでしょう。
古代ローマ:デナリウス銀貨
古代ローマを代表するコインといえば、デナリウス銀貨です。中でも、ローマを守護する女神が描かれたデナリウス銀貨は人気があるようです。
古代ローマのコインは発行された時期によってデザインが異なるためさまざまなバリエーションがあるのですが、それぞれ発行枚数が多いため、あまり貴重なコインという扱いを受けてきませんでした。しかし、近年になってオークションに出てくる数が少なくなって、値上がりも続いています。
EUで古代の出土品の流通が制限されていることなどの背景から、古代コインも出回りにくくなってきています。特に財政難を抱えるイタリアは自国の古代の遺産が海外に流出するのを嫌っているのか、なかなか目にする機会がありません。正規のルートで古代ローマのコインを手に入れることができれば、今後も値上がりが期待できるでしょう。
古代マケドニア:スターテル金貨
アレキサンダー大王時代に発行された古代マケドニア王国のスターテル金貨も、価格が上がっているコインです。紀元前4世紀に発行された金貨で、表面には女神アテナが、裏面には女神ニケがデザインされています。ギリシャ海軍がペルシャ海軍を打ち破ったことを示すデザインで、アレキサンダー大王の勝利を示すコインでもあります。
ニケの右側には「ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΥ」という文字列が刻まれており、これは貨幣の発行者であるアレキサンダー大王の名前を表しています。古代の英雄として有名なアレキサンダー大王の存在を身近に感じられる貴重な古代コインだと言えるでしょう。
スターテル金貨は、10年で2倍以上の値上がりを見せています。グレードによって異なりますが、値上がりしやすい古代コインと言えるでしょう。
歴史のロマンを存分に湛えていることから、スターテル金貨は海外のアンティークコインコレクターの間で人気があり、価格も高騰しつつあります。国内にもその波が押し寄せて値上がりしていくと考えられるので、今のうちに投資をしておくのも良いかもしれませんね。
まとめ
価格が上昇しやすい古代コインについて見てきました。古代コインは発行枚数が多いため今まではあまり注目されて来なかったのですが、素朴なデザインが現代のコレクターにとって逆に新鮮に感じられることや、誰もが知っている古代の歴史を象徴する遺産であることなどから、コレクターの所有欲を高めるコインになってきています。
2000年以上も昔に作られたものなので、新品同様のコインは非常に少ないです。それゆえに、極美品クラスでも高値がつきやすいのも古代コインの魅力となっています。
是非古代コインを手にする機会がありましたらお伝えしてきたことに注目して手に取っていただけると、より一層アンティークコインの魅力がお判りいただけると思います。
みなさんにアンティークコインで幸あれ!