2023.12.29
コイン解説&写真
ブラジル
スポットライトが当たり始めてる注目のコイン!「ブラジル ジョアン5世の20000レイス金貨 ②」
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
前回に続き今回は「ブラジル ジョアン5世の20000レイス金貨」の歴史的背景をお伝えします。
ジョアン5世の統治とポルトガルの支配
ジョアン5世は、1706年~1750年までポルトガル王国ブラガンサ朝の国王を務めた人物です。父であるペドロ2世の死去を受けて王位を継ぎました。
(画像:ジョアン5世)
即位した頃には既にポルトガルはスペイン継承戦争に巻き込まれていました。1708年にはオーストリアとの同盟を強化するため、ジョアン5世は神聖ローマ皇帝レオポルト1世の皇女と結婚しています。そのため、ポルトガルはオーストリア(神聖ローマ帝国)やイギリス、オランダ、プロイセンなどの連合国軍側につき、フランス、スペインと戦いました。
1713年、スペイン継承戦争が集結し、ユトレヒト条約が結ばれます。フランスはスペインにおける王位を認められましたが、実質的に最も得をしたのはイギリスで、ジブラルタル、ミノルカ島を獲得します。ポルトガルも、スペインからコロニア・デル・サクラメント(現在のウルグアイ)とアマゾン川両岸を得ることができ、ブラジルにおける植民地支配を少しではありますが拡大することができました。
メシュエン条約とイギリスへの依存
1693年にブラジルのミナスジェライス州オウロ・プレットで金鉱が発見されました。生産量は1712年に14500kg、1720年には最高の25000kgに達し、ブラジルでもポルトガルでもゴールドラッシュに沸いていました。
(画像:オウロ・プレット)
莫大な金は金貨になり、ポルトガルの貿易に使われてしまいました。しかし、ポルトガルは輸入過多であったため、金貨はヨーロッパ諸国への輸入の代金支払いに消えていき、ポルトガル国内には富は残りませんでした。
1703年にはメシュエン条約が交わされ、ポルトガルはイギリスの毛織物を輸入する代わりに、イギリスはポルトガルのワインを輸入することが正式に決定しました。当時のイギリスはフランスと植民地戦争の状態にあり、ワインの輸入が減っていたため、フランスの3分の1の関税でポルトガルのワインを手に入れられるようになりました。また、ポルトガルが国産品を保護するために認めてこなかった毛織物も輸出することができるようになりました。
メシュエン条約が締結される前からこのような状況ではあったのですが、条約が締結され、ポルトガル経済はイギリスにどんどん依存していくようになります。18世紀までポルトガルは輸入が超過した状態になるのですが、それでもポルトガルの経済が破綻しなかったのは、ブラジルから無尽蔵に金を産出することができたからです。
結果として、ブラジルの金はイギリスに蓄積されていくことになりました。イギリスにストックされた金はイギリスの産業革命の資本になり、金本位制の確立へと向かって行きます。こうしてイギリスは世界をリードする大国へと成長していきました。
一方、ブラジルでは1760年代から金の産出が急速に減少していきました。19世紀になるとブラジルはポルトガルからの独立を果たします。結果的には、メシュエン条約はポルトガルには大きな恩恵をもたらすことは無かったのです。
まとめ
ジョアン5世が統治した時代に発行されたブラジルの20000レアル金貨について解説してきました。このコインは金が豊富に採れた豊かな時代を象徴する、大きくてずっしりとした金貨です。
コインの存在感やデザインの美しさなどから、非常に注目が集まっているコインです。1726年のコインは500枚しか発行されていないとされていることなど、希少価値も非常に高いため、今後の値上がりも期待できます。
みなさんにアンティークコインで幸あれ!