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2024.02.2

コイン解説&写真

フランス

近代

異色ポジションの人物コイン『フランス アンリ5世の5フラン銀貨(1831年) 試鋳貨①』

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

イギリスのコインの価格が激しく高騰する中、アンティークコインのコレクターや投資家はヨーロッパの他の国のコインにも目を向けています。そのうちの一つが、フランスのコインです。

フランスもブルボン王家やナポレオン家などが統治してきた歴史があり、コインの肖像や発行も系統立っているため、コインのコレクションは比較的にやりやすい方です。

今回ご紹介するのは、フランスのアンリ5世の肖像が刻まれた5フラン銀貨『フランス 1831年 アンリ5世 5フラン 銀貨』の試鋳貨です。先ほど系統が分かりやすいと述べましたが、アンリ5世は王家の人物ですが王に即位したことは無く、異色のポジションの人物です。

なぜ国王に即位したわけではないのに試鋳貨が作られたのかなど、詳しく解説していきます。

フランスのアンリ5世5フラン銀貨(試鋳貨)の基本情報

フランスで発行されたアンリ5世5フラン銀貨の試鋳貨について、基本情報を整理しておきましょう。

・国:フランス
・発行年:1831年
・素材:銀
・直径:約37.5mm
・重量:約33g
・表面:アンリ5世の肖像
・裏面:王冠とフルール・ド・リス

本コインは、1830年7月革命の後、アンリ・ダルトワが王位継承権を主張してフランス国王アンリ5世を名乗り、プロパガンダ用として製作したものです。

試鋳貨は枚数が少なく人気があり、グレードが高いものであれば値上がりも期待できます。(画像左:1831年発行コイン 右:1871年発行コイン)

表面の肖像はアンリ5世で、かなり若い印象があるかと思います。アンリ5世は1820年に生まれたため、1831年に発行された5フラン銀貨では若い肖像が使われています。

「フルール・ド・リス」について

コイン裏面の「フルール・ド・リス」とは、アイリスの花を様式化したデザインの意匠です。フランスでは古くから王権を象徴するモチーフで、フランス革命が起こるまで絶対王政を敷いたブルボン家の紋章にもフルール・ド・リスが3つあしらわれています。(画像:コイン裏面)

フランス王旗にはフルール・ド・リスが描かれていましたが、フランス革命のときに現在と同じトリコロールの国旗に変更されました。その後、フランスの政治の変化とともに国旗も変更されてきました。

7月革命で国を追われていたアンリ5世は、ナポレオン3世による第二帝政の滅亡後、トリコロールの旗をフルール・ド・リスの旗に戻すことを掲げ王政を復活させようとしました。結果的には却下され、フランスは共和政を取ることになりましたが、フルール・ド・リスがアンリ5世を象徴するモチーフであることがうかがえます。

アンリ5世について

ご紹介する試鋳貨の表面に肖像が刻まれているアンリ5世について、詳しく解説していきましょう。

アンリ5世の呼び方

アンリ5世ことアンリ・ダルトワ(1820-1883年)は、フランス王シャルル10世の孫で、ブルボン家で最後の王位継承候補となった人物です。ブルボン王朝を指示する人々からは「アンリ5世」と呼ばれましたが、現在では「シャンボール伯」と呼ぶことが多いです。

「シャンボール」とは、亡命中に滞在していたシャンボール城にちなんだ儀礼称号です。シャンボール城はフランス北中部のロワール=エ=シェール県のシャンボールにあり、現在は「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」に含まれ、世界遺産に登録されています。ちなみに、1981年から2000年までは単独で世界遺産に登録されていました。

また、アンリ5世は誕生からシャルル10世に王位を譲位されるまで、ボルドー公爵でもあり「ボルドー公」という称号も持っていました。

次回はアンリ5世の生い立ちについてお伝えします。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!