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2023.10.2

イギリス

コイン解説&写真

成功する投資・アンティークコインの知識を深めよう!イギリス編②

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に引き続きイギリスの歴史とコインについてお伝えしていきます。

スコットランド王国の併合

アン女王時代の出来事といえば、スペイン継承戦争の他にスコットランド王国の併合も挙げられます。1707年にイングランド王国がスコットランド王国を併合してグレート=ブリテン王国が誕生し、アン女王は両国を束ねる女王となりました。(画像:アン女王)

現在でも、時折スコットランド独立運動のニュースに触れることがあります。2013年のスコットランドの住民投票では反対派が多数となりましたが、今もイギリスは揺れています。2016年にイギリスがEUから離脱することを決めたものの、スコットランドでは残留派が多く、独立した上でEUに加盟する可能性も残っています。

クラウン銀貨「スリーグレイセス」

スリーグレイセスはジョージ3世が統治していた頃に作られた銀貨です。1817年に作られた試作貨は50枚ほどと言われており、これだけでも非常にレアなことが分かるのですが、年月が経っているため綺麗な状態で残っているものも少なく、高値で取引されています。

スリーグレイセスも、ウナとライオンのデザインを手がけたウィリアム・ワイオンによるコインです。裏面には3人の女性が細かく描写され、ワイオンらしい繊細なデザインとなっています。中央にはイングランドの女神ブリタニアが、右側にはスコットランドの女神スコッティアが、左側にはアイルランドの女神ブリギットが描かれています。

イングランド、スコットランド、アイルランドの連合王国

アン女王時代にイングランドがスコットランドを併合しましたが、ジョージ3世の時代にはアイルランドも併合し、1801年に「グレートブリテンおよびアイルランド連合王国」が誕生しました。スリーグレイセスにデザインされているのは各王国の女神であり、3つの国の連合を象徴するコインと言えるでしょう。しかし、中央がイングランドなのがミソですね。

現在のイギリスの国旗であるユニオンジャックは、このときから使われるようになりました。赤い十字はイングランドのセント・ジョージ旗を、青地に白の斜め十字はスコットランドのセント・アンドリュー旗を、赤い斜め十字はアイルランドのセント・パトリック旗が由来となっています。3つの王国の旗を合わせたものが、ユニオンジャックなのです。

なお、1922年に北アイルランドを除いてアイルランドが独立したため、その後のイギリスの正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。

ジョージ6世 5ポンド金貨

さて、近代のイギリスのコインも見ていきましょう。近代で特に人気があるのは、ジョージ6世の5ポンド金貨です。1937年のプルーフ金貨は発行枚数が5500枚と少なく、数百万円で取引されるコインです。とはいえ上述した最上級のレアコインよりは発行枚数が多いため市場で見かける機会も多く、手が届きそうなコインと言えるでしょう。

ジョージ6世は現在の女王であるエリザベス2世の父であり、先代のイギリス国王です。第二次世界大戦中もイギリスを支えたことや、イギリス王室への信頼を回復させたことなどの功績があり、「善良王」とも呼ばれています。

というのも、ジョージ6世の直前に王位についていたエドワード8世が困った人物で、国民の王室への信頼が揺らいでしまっていたのです。ジョージ5世が崩御して王位についたエドワード8世は、ヒトラーやムッソリーニなどと交友を深めたり、他人の妻に恋をしたりと、困った言動が目立っていました。しかも、他人の妻との結婚のため、在位してから1年も経たないうちに王位を捨ててしまいます。

その後、1936年に即位したのがジョージ6世なのですが、エドワード8世の困った言動のお陰で信頼は失われており、マイナスからのスタートとなりました。その上、第二次世界大戦も勃発し、苦しい中でイギリスを率いることになりました。

第二次世界大戦下のイギリス

1939年に、イギリスはポーランドを侵略したドイツに対して宣戦布告しました。ドイツによる空襲に晒されることもありましたが、ジョージ6世夫妻はロンドンにとどまります。ジョージ6世は慰問にも訪れ、最前線の兵士を鼓舞したこともありました。

第二次世界大戦は当時のチャーチル首相の功績が大きかったと言われることが多いのですが、ジョージ6世が何もしなかったわけではありません。国民の士気を高めるなどの貢献があったのです。

ジョージ6世を描いた『英国王のスピーチ』

ジョージ6世の生涯を知りたいなら、映画『英国王のスピーチ』をご覧になることをおすすめします。吃音症に悩む国王がその治療に励み、セラピストのライオネルと妻エリザベスと共に乗り越えるエピソードが描かれています。(画像:ジョージ6世夫婦)

吃音症を患っていたことは事実で、大勢の前でのスピーチも仕事である国王にとっては致命的と言っても過言ではありません。吃音症に悩む国王という難しい役を演じ切り、説得力のある映画にしたコリン・ファースの演技も見ものです。

エリザベス2世 5ポンド金貨

一代前のイギリス君主で「エリザベス女王」と呼ばれているのが、エリザベス2世です。枚数が限られた記念コインも発行されており、現代のコインなので集めやすいです。

特に人気があるのが、1980、1981、1982、1984年の4年間に発行されたエリザベス女王の肖像が刻まれた5ポンド金貨です。「ヤングエリザベス 5ポンド金貨」とも呼ばれています。中でも1982年に発行されたコインは出回りにくく、100万円以上の値段がつくことも珍しくありません。

現在のイギリスは、EU離脱に伴う先行き不安という課題を抱えています。また、ヘンリー夫妻が英王室を離脱し、暴露本やゴシップ誌で根拠薄弱な悪評を書かれるなど王室自体もダメージを受けています。

戦争が無く平和な時代ではありますが、それゆえにこれまで直面したことがないリスクに直面しているのも確かです。エリザベス2世は王室をまとめ、国民との絆を深くすることで、歴史に功績を刻んでいきました。現在発行されるコインを集める楽しみは、未来の歴史につながる記念を手元に置ける喜びも挙げられるでしょう。

在位60年(ダイヤモンド・ジュビリー)を記念

1952年に即位したエリザベス2世は2012年に在位60年を迎えました。その功績を称え、ロンドンのシンボルである「ビッグ・ベン」の改称が話題になりました。正式には、時計のある塔はビッグ・ベンではなく「クロック・タワー」で、これが「エリザベス・タワー」に改称されています。

ちなみに、南側にある「キングス・タワー」は「ヴィクトリア・タワー」に改称されました。このヴィクトリアは上述したヴィクトリア女王のことです。彼女も在位期間が60年を超え、ダイヤモンド・ジュビリーを達成したので、敬意を表して名前がつけられることになりました。

まとめ

2回に分けてアンティークコインを中心に、イギリスの歴史を紹介してきました。王室の歴史が長く血統がきちんとしているので、イギリスの歴史はヨーロッパ諸国の中では理解しやすい方です。

歴史が分かりやすいことに加え、発行枚数が明らかなことなどから、イギリスのコインはコレクターに人気があります。コレクションしやすくコイン投資初心者の方にもおすすめできるので、歴史にもご興味を持っていただけたらと思います。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!