2023.10.12
コイン解説&写真
イタリア
成功する投資・アンティークコインの知識を深めよう!イタリア編②
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
今回は帝国の分裂と滅亡から現代までのコインと歴史についてお伝えします。前回の古代からのイタリアの歴史とコインは下記からご覧いただけます。
帝国の分裂と滅亡
領土を拡大したローマ帝国ですが、4世紀に入ると西と東に分裂します。五賢帝時代が終わって政治は混乱に陥り、軍事力も落ちていったことが背景にあります。皇帝テシオドス1世が長男に東ローマ帝国を、次男に西ローマ帝国を与え、ローマ帝国は分裂しました。
西ローマ帝国は現在のフランス、ドイツ、イタリアを含む領土を持ちましたが、やはり内乱が続きます。5世紀にはゲルマン人に滅ぼされ、西ローマ帝国は滅亡し、さらに分裂しました。これが現在のフランス、ドイツ、イタリアにつながっていきます。
ちなみに東ローマ帝国は現在のギリシャ、トルコからエジプトにかけてを領土とし、1000年ほど続きました。
神聖ローマ帝国
西ローマ帝国の分裂後は、現在のドイツやイタリアのあたりを領土とする神聖ローマ帝国に引き継がれました。しかし領土を奪ったり奪われたりするうちにイタリア部分の支配は縮小し、神聖ローマ帝国は実質は現在のドイツを中心とする国になりました。
フランスと神聖ローマ帝国の戦地になったり、スペインやフランスに攻め込まれたりもしていました。古代ローマ帝国の時代はヨーロッパの中心でしたが、次第に周辺諸国に権力の中心が移って行ったことが分かります。
ルネサンス
イタリアの歴史で重要な出来事の一つに、ルネサンスがあります。ルネサンスとは「再生」を意味するフランス語で、14世紀から16世紀にかけてイタリアを中心に興った芸術の運動です。古代ギリシャ・古代ローマの自然に基づいた文化に価値を見出し、再生することを目指しました。
当時の芸術は、キリスト教を布教するためのものだった側面があり、表現の方法が決まっていて画一的でした。神を絶対視するあまり、人間の自由が失われていた時代だったのです。
ルネサンス期の芸術家たちが理想としたのが古代ギリシャ・古代ローマの芸術です。本物の人間そっくりの彫刻など、古代の美術品は現代の私たちが見ても驚くほど美しくできていますよね。ルネサンス期の芸術家たちは古代の自然な人間の描写を良いものと捉え、絵画や彫刻などを制作しました。
これにより、芸術のレベルは格段に上がりました。代表的な芸術家は、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの3名でしょう。ルネサンスはヨーロッパの芸術に大きな影響を与えたので、覚えておきましょう。
イタリア王国の成立
イタリアの都市は神聖ローマ帝国やフランス、スペインの支配されて長らく分裂した状態が続くのですが、1861年にようやくイタリア王国が成立し、1870年にはローマを併合し、現在のイタリアにかなり近づきます。
イタリアを統一して初代国王となったのが、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世です。当時の金貨についても見ていきましょう。
ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の20リレ金貨
当時の金貨は、表面にはヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の肖像が、裏面にはサヴォイア王家の紋章が刻まれています。ローマを併合する前はトリノが首都であり、トリノの造幣局で作られていました。
口ひげが立派な肖像が残っているのですが、コインの肖像にもやはり立派な口ひげが描かれています。現代に近いこともあり、髪の毛や紋章の縞などのデザインが非常に細かく、美術品としても眺められる逸品です。
第一次世界大戦(1914年~1918年)
イタリア王国がようやく成立したと思ったら、第一次世界大戦に参戦します。第一次世界大戦の軸は、三国同盟(ドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリア)と三国協商(イギリス、フランス、ロシア)の対立です。
しかし三国同盟といっても、オーストリア・ハンガリー帝国とはイタリア統一戦争で対立したため、イタリアは良く思っていませんでした。大戦が始まると、イタリアはイギリス、フランス、ロシアと「ロンドン秘密条約」を交わします。そして三国同盟を廃棄し、イギリスやフランスと共に連合国として戦いました。
結果的には戦勝国になりますが、ドイツとオーストリア・ハンガリー帝国を裏切って、イギリスやフランスと共に勝利を収めた形となります。
第二次世界大戦(1939年~1945年)
ヨーロッパは第二次世界大戦に突入しました。イタリア、ドイツ、日本の枢軸国と、イギリス、フランス、アメリカ、ソ連、中国の連合国との対立が世界規模に発展した大戦です。
イタリアが、第一次世界大戦では対立したドイツと手を組んだことを不思議に思われるかもしれません。当時はオーストリア・ハンガリー帝国との対立が深かったのですが、ドイツとの溝はそこまでではなかったようです。
第二次世界大戦は主にドイツが引き起こしたヨーロッパ戦線と、日本が引き起こした太平洋戦争に分けられます。イタリアは不況もあり、どちらかと言うとドイツのお荷物だったと言われています。
結果はご存じのとおり敗戦で、国民投票で王制が廃止されたこともあり、アメリカ側についてイタリア共和国として再スタートすることとなりました。
まとめ
2回に分けてイタリアのコインと歴史について解説してきました。イタリアの歴史のハイライトはやはり古代ローマ帝国で、歴史全体を見ても半分ほどが古代ローマの解説に割かれるものです。
イタリアのコインを集めるなら、古代ローマのコインから始めるのが王道かと思います。五賢帝など、古代の有名な皇帝の肖像が刻まれたコインを手のひらの上で愛でてみてはいかがでしょうか?
みなさんにアンティークコインで幸あれ!