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2023.12.18

イギリス

コイン解説&写真

絶大な人気を誇る・イギリス ヴィクトリア女王5ソブリン金貨コイン②

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

本日は前回に引き続き注目のコイン『イギリス ヴィクトリア女王 5ソブリン金貨』になります。

今回の記事では、ヴィクトリア女王や裏面の聖ジョージについて紹介していきます。

ヴィクトリア女王について

ここからは、5ソブリン金貨に肖像が刻まれているヴィクトリア女王について理解を深めていきましょう。

ヴィクトリア女王は19世紀の大英帝国が最も栄えていたときに王位についていた女王です。当時の王朝を、彼女の名前を取って「ヴィクトリア朝」とも呼びます。

大英帝国が最も栄えていた頃の女王であるため、「ヴィクトリア女王はさぞかし政治手腕に優れた女王だったのだろう」と思われがちなのですが、実際は政治手腕はあまり高く評価はされていません。

ヴィクトリア女王の性格が18歳で即位した当時のイギリス経済は不況に落ち込んでおり、他国の産業の発展も追いついて産業革命のリードを失いつつあり、しかも全国的な不作もあって「栄華」とはほど遠い時代でした。ディケンズが『オリバー・ツイスト』を発表し、貧困層の暮らしを小説で描いたのもこの頃です。

そのような中、イギリスは植民地政策に力を入れ、1877年にはインドを併合して植民地支配を確立します。同年、ヴィクトリア女王は初代のインド皇帝に即位しました。その証である5ソブリン金貨の肖像でも、インド皇帝勲章を身につけている様子が描かれています。

植民地化の政策は強硬的に進められ、大英帝国は地球上の陸地と人口の4分の1を支配するほどの大国になりました。

ヴィクトリア女王の性格

ヴィクトリア女王は短気で頑固な性格として知られています。人を好き嫌いで判断したため、有能な政治家を追い払ってしまうなどの問題もありました。

また、ヴィクトリア女王はイケメンに甘いなど面食いだったという説もあります。彼女が結婚したのはドイツ出身のアルバートですが、アルバートが美形だったため、ヴィクトリアの方から好意を持ったそうです。
(画像:1854年撮影ヴィクトリア女王とアルバート公)

二人は4人の男の子と5人の女の子を授かり、子宝に恵まれました。ヴィクトリア女王の痛みを和らげるため、医者たちは世界初の無痛分娩を行ったと言われています。

このベビーラッシュはアルバートを救うことにもつながりました。もともと外国人であるアルバートはヴィクトリア女王以外に気にかけてくれる人がおらず、宮廷内で孤立しがちでした。しかし、妊娠や出産のために仕事ができない期間、アルバートはヴィクトリア女王の補佐役を務めました。アルバートは高い政治手腕を発揮し、周囲の信頼を勝ち得ていくことができたのです。

聖ジョージについて

ヴィクトリア女王の5ソブリン金貨の裏面には、聖ジョージがドラゴンを退治する場面が描かれています。馬に乗っているのが聖ジョージで、奥に小さいですがドラゴンが描かれています。

聖ジョージがドラゴンを退治する場面は、イギリスのコインによく用いられてきました。聖ジョージはキリスト教の聖人の一人で、「ジョージ」は英語読みです。日本語の文献では、「聖ゲオルギウス」の読むことが多いです。

聖ジョージのドラゴン退治は『黄金伝説』に書かれています。現在のトルコ・カッパドキアにあった村には悪いドラゴンがおり、毎日羊を生贄にすることでドラゴンの暴走を収めていました。羊が足りなくなって人間を生贄に捧げることになったのですが、くじで生贄に選ばれたのは王の娘でした。
(画像:聖ゲオルギオスとドラゴン【ラファエロ画】)

そこに聖ジョージが通りかかり、退治を請け負ってドラゴンと戦います。
聖ジョージはドラゴンを捕まえて村に連れてきて、キリスト教徒になればドラゴンを退治すると言いました。異境の村はキリスト教を受け入れ、ドラゴンもいなくなった、という英雄伝説です。

まとめ

2回に分けてヴィクトリア女王の5ソブリン金貨について解説してきました。プルーフは数が少なく数百万円で取引されるのですが、流通していたものも含めると枚数は多いです。そのためコレクションしやすい特徴があります。

1887年のコインはヴィクトリア女王の即位50周年を記念したものであり、当時は大英帝国が最も栄えていた時代です。最も輝かしい時代を象徴するコインなので、ぜひ1枚は手元に置いておきたいものです。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!