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2023.12.22

イギリス

コイン解説&写真

注目のメダル!イギリス ジョージ4世 戴冠式の記念メダル②

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に続き今注目すべきメダル「イギリス ジョージ4世 戴冠式の記念メダル」についてお伝えします。

ジョージ4世について

このメダルはジョージ4世の戴冠式の記念メダルです。ここからは、ジョージ4世について解説していきましょう。

ジョージ4世は1820年1月29日~1830年6月26日まで在位したイギリスの国王です。彼は強硬な国王として知られていますが、国内の融和に貢献した人物でもあります。

ジョージ4世は戴冠式の後、アイルランドやハノーヴァーを訪問しました。このときの態度がフランクで良い意味で王族らしくなく、現地の人々からも好感を得ます。リチャード2世以来、初めて公的にアイルランドを訪れた国王となりました。

さらにジョージ4世はスコットランドにも訪問しました。国王がスコットランドを訪れたのは17世紀中期依頼であり、歴史的な訪問となりました。

それまで誰もスコットランドを訪問したことが無かったのは、イギリスに併合されたことへの恨みが強く、王族が出向くのは危険だと考えられていたためです。その点、ジョージ4世はアイルランド訪問などで民衆と良い関係を築けたことを良しとしたためか、スコットランドへも恐れずに訪問しました。

スコットランド訪問時には、スコットランドの伝統的な民族衣装であるキルト(タータンチェックの巻きスカート)を身につけて現れます。これがきっかけで、スコットランドの人々もジョージ4世を歓迎したのです。現地の人々としては、自分たちの伝統文化を尊重してくれているみたいで嬉しいですよね。

現在もイギリス王室の男性はスコットランドを訪れるときにキルトを着用しますが、その伝統はジョージ4世から始まっています。

悪名高き王の姿

スコットランドとの融和の功績がある一方で、悪名高き王としても知られています。父親のジョージ3世が倹約家だったのに対し、豪華を好む浪費家で、女性関係も派手でスキャンダルが絶えませんでした。

例えば、 政府と父親から合計11万ポンドの援助を受けましたが、馬の管理費用だけでも年に3万ポンドを使ってしまうような人物です。入ってくる以上にお金を使ってしまうため、1795年には借金は63万ポンドを超えるほどに膨らんでいました。これは、現在の価値に直すと80億円にも上ります。

ジョージ4世の戴冠式には24万ポンドを超える支出があり、非常に贅沢だと言われているのですが、この金額がかすむほどの借金です。

また、嫌々結婚させられたことには同情しますが(その後離婚)、非公式に女性と結婚したり、数多くの愛人がいたりと、女性関係も派手でした。確証はありませんが、隠し子が大勢いたのではないかと言われています。

ジョージ4世の自由奔放っぷりには、父親であるジョージ3世も悩み、神経を病んで健康を害してしまう結果になりました。亡くなるまで息子のことで悩んでいたそうです。

コインの裏面の3人の女性の意味

コインの裏面には、冠をいただくジョージ4世と、それを見守るように立っている3人の女性が描かれています。3人の女性はそれぞれ、イングランドを代表する女神ブリタニア、スコットランドを代表する女神スコティア、アイルランドを代表する女神ヒベルニアを表しています。

3人の女神を描いたデザインは、イギリスのコインではあまり珍しくはありません。しかし、ジョージ4世の場合はスコットランドやアイルランドの人々に受け入れられた人格を象徴しているようにも思えるデザインで、歴史を象徴しているように感じられます。

まとめ

2回にわたりジョージ4世の戴冠式のメダルと彼の人生を中心に解説してきました。浪費家で女性関係が派手という現代なら批判されるような人物ですが、アイルランドやスコットランドの融和のような重要な功績もあります。親しみやすい性格を活かして政治を行った、と言えるのではないでしょうか。

戴冠式のメダルは、コインには無い奥行きや立体感、重量感があり、非常に人気が高いです。発行枚数も少なく希少価値が高いので、ぜひコレクションに加えたい逸品になります。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!