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2024.02.12

古代

コイン解説&写真

近年人気が高まっているコイン「プトレマイオス朝エジプト 古代ギリシャ金貨②」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に引き、続き近年人気が高まっているアンティークコインの一つ、古代コイン。古代ギリシャや古代ローマなどで、人類が金属の貨幣を発明した頃の作られ、流通していたプトレマイオス朝エジプトの女王アルシノエ2世の肖像が刻まれた金貨「プトレマイオス 古代ギリシャ金貨」についてです。コインの基本情報はこちらをご覧ください。

アルシノエ2世について

アルシノエ2世の人生についても解説していきます。クレオパトラと並ぶエジプトの女傑とされているアルシノエ2世ですが、最初から恵まれた境遇にいたわけではありません。彼女の肖像が描かれた8ドラクマ金貨は、彼女とエジプトのどのような歴史を象徴しているのかを学んでいきましょう。

地位を得るまでの苦労

アルシノエ2世はプトレマイオス1世の娘として生まれました。当時のプトレマイオス朝エジプトは一夫多妻制です。かつ王位継承原則が明確でなく王の指名によって後継者が選ばれたため、継承権があるとされる王族の兄弟間では争いが起こり、敗れた方は殺害されたり追放されたりしました。

アルシノエ2世もまた、王位継承権をめぐる争いに巻き込まれた人物の一人です。

紀元前300年、10代のアルシノエ2世は60歳くらいのマケドニア王国の将軍リュシマコスと結婚し、3人の息子を設けました。紀元前281年にリュシマコスは戦死した後、アルシノエ2世は彼女の異母兄弟であるプトレマイオス・ケラウノスと結婚します。結婚によってアルシノエ2世はマケドニア王妃になりますが、ケラウノスはアルシノエ2世の次男と三男を殺害します。長男はダルダニア人の王国へ逃れ、アルシノエ2世自身も弟のプトレマイオス2世の庇護を求め、エジプトのアレクサンドリアへ逃れました。

弟の最初の妻であるアルシノエ1世に夫の暗殺疑惑の濡れ衣を着せたアルシノエ2世は、弟であるプトレマイオス2世と結婚します。アルシノエ2世はこうして安定した地位を手に入れることができました。
(画像左表面:プトレマイオス2世、アルシノエ2世 オクトドラクマ金貨
   右裏面:プトレマイオス1世、ベレニケ1世)

「弟の前妻を罠にかけた女性が神格化されるなんて変だ」と感じられるかもしれませんが、現代と違って当時は生き馬の目を抜く時代です。やられる前にやらなければ自分が割を食う時代だったことを踏まえて理解していただければと思います。

国王夫妻の神格化

アルシノエ2世は夫であり弟でもあるプトレマイオス2世の肩書を自分でも名乗り、外交政策や王朝祭祀にも参加しました。このことが王権を王と王妃(女王)の2人からなるものと印象づけました。国王夫妻は生前から神格化され、崇められるようになりました。

アルシノエ2世の死後もプトレマイオス2世は公文書で彼女のことに触れており、彼女を女王として崇めるように書いています。また、アルシノエ2世の死後、彼女を女神として祀る大神殿アルシノエイオンが建立されました。

アルシノエ2世の肖像が刻まれたコインが長く発行されたのも、このような背景があって女神として神格化されていたからです。アルシノエ2世は8ドラクマ金貨は、プトレマイオス朝エジプト時代の王族の権力や闘争を象徴するコインだと言えるでしょう。

まとめ

プトレマイオス朝エジプト アルシノエ2世の8ドラクマ金貨について解説してきました。古代の金貨では最大級の大きさと重量を誇る金貨で、近年人気が高まっています。

アルシノエ2世は壮絶な境遇を生き抜いて地位を手に入れた女傑でもあります。有名なクレオパトラに隠れて目立たなくなっていましたが、近年では評価が見直されており、研究が進んでいる女王でもあります。エジプトの歴史に残る女傑なので、アルシノエ2世の8ドラクマ金貨を手に入れる機会が巡ってきたら、チャンスを逃さずに入手しましょう。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!