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2024.02.14

ドイツ

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近世

羊が特徴のコイン「神聖ローマ帝国(ドイツ) ラムダカット金貨①」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

神聖ローマ帝国時代に使われていたダカット金貨は、大型のものが多くアンティークコインのコレクターや投資家に人気があります。

そんなダカット金貨の中でもユニークなのが「ラムダカット金貨」です。「ラム」はコインの表面に書かれている羊のことを指しています。ラムダカット金貨には、円形のコインと正方形のコインがあることや、32分の1ダカットという非常に小さい額面があることなど、他のダカット金貨と異なる特徴があります。

高騰しているダカット金貨に比べると、ラムダカット金貨はまだあまり高騰していないので、入手しやすいと言えます。この記事ではラムダカット金貨について解説していくので、コレクションに加える際の参考にしていただければ幸いです。

神聖ローマ帝国(ドイツ) ラムダカット金貨の基本情報

神聖ローマ帝国で作られていたラムダカット金貨について、基本情報を整理しておきましょう。

・国:神聖ローマ帝国
・発行年:1700年前後
・発行枚数:不明
・素材:金
・表面:旗を持つ羊
・裏面:紋章

ラムダカット金貨の額面には、5、4、3、2、1、2分の1、4分の1、8分の1、16分の1、32分の1ダカットがあります。かつ、それぞれの額面に対して円形のコインと正方形のコイン(クリッペ)が作られたので、種類が非常に豊富です。いずれも表面には羊が描かれており、紋章はコインによってやや異なります。

ラムダカット金貨のデザイン

ラムダカット金貨のデザインについて解説していきます。発行年が書かれていないように見えますが、隠し文字で刻まれているなど特徴あるデザインなので、その秘密を見ていきましょう。

表面に描かれた羊の意味

ラムダカット金貨の表面には、旗を持った羊が描かれています。一般的なダカット金貨ではその当時の神聖ローマ帝国の皇帝の肖像が描かれていることが多いのですが、ラムダカット金貨は特定の人物ではなく羊です。他のコインには無い特徴で親しみやすく、ラムダカット金貨の人気に一役買っています。

なぜ羊が描かれているのかは諸説あります。全能の神ゼウスの黄金の羊伝説や、キリスト教における重要なモチーフであることなどに由来していることが考えられます。このようにヨーロッパでは羊が身近な存在であり、神話や聖書によく登場します。

ギリシャ神話では、「2人の子供を殺されてしまうかもしれないから助けてほしい」と言うテーベの国の王妃に、ゼウスが黄金の羊を与えました。黄金の羊は2人の子供を乗せ、コルキスの国へ運びます。コルキスの王は2人に親切にしてくれました。羊はゼウスのいけにえに捧げられ、黄金の毛皮はコルキスの神殿に飾られることになりました。

また、羊はキリスト教では重要なモチーフです。「神の子羊」と言われるように、羊はイエス・キリストを表しているからです。羊は古来から神にいけにえとして捧げられてきましたが、イエスは罪をゆるされるための最後の完全ないけにえである、と解釈されています。

やや難しいのですができるだけ簡単に解説すると、そもそも旧約聖書ではアダムとイヴが禁断の果実を食べるという罪を犯しており、アダムとイヴの子孫である人間は生まれながらに原罪を背負う罪深い存在である、というのがキリスト教の考え方です。イエスは十字架にかけられて処刑されるのですが(3日後に復活するのですが)、これはイエスをいけにえとして捧げ、神に対して全ての人間の罪への許しを請うことだと言い換えられます。イエスがいけにえとなって人間はゆるされたと考えるため、イエスは最後にして完全ないけにえだった、とキリスト教の世界では考えています。

このように、羊は古来のいけにえを象徴しています。ラムダカット金貨の表面に描かれる羊が掲げている旗にはラテン語で「平和」を表す「PAX」の文字が刻まれており、ヨーロッパにもたらされる平和を象徴しているデザインと解釈することができます。

次回はコインに描かれている隠し文字についてお伝えします。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!