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2024.03.8

古代

コイン解説&写真

イギリスコインの次なる注目のコイン「ビザンチン帝国 モーリス・ティベリウス帝 ソリドゥス金貨 ②」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に引き続き「ビザンチン帝国 モーリス・ティベリウス帝 ソリドゥス金貨」についてお伝えします。コインの基本情報はこちら。

ビザンチン帝国について

ビザンチン帝国はローマ帝国を継承した国家です。その始まりは395年のローマ帝国の東西分裂や、西ローマ帝国が滅亡して東ローマ帝国が唯一のローマ帝国の継承国となった476年とするなど、決まった定説はありません。首都のコンスタンティノープルは第二のローマと呼ばれましたが、ギリシア世界と地理的に近かったためギリシア的な性格が強くなり、ローマ教会との対立が明確となった結果、7世紀頃からビザンチン帝国と呼ばれるようになりました。

ビザンチン帝国の全盛期はユステエィニアヌス大帝の時代です。彼の治世においては西方に進出し、555年に東ゴート王国を滅ぼすなど西方のゲルマン諸国の征服を行いました。かつてもローマ帝国の領土を一時的に回復し、栄華を誇りました。

首都コンスタンティノープルは東西交易の中心地となり、貨幣経済が発達して貨幣の需要がありました。ローマ帝国依頼、ソリドゥス金貨はビザンツ帝国でも発行を続けられています。ビザンツ帝国ではソリドゥス金貨のことを「ノミスマ」と呼んでおり、ビザンツ帝国でも純度を落とさずに発行したため、コンスタンティノープルを中心とした貨幣経済の基軸通貨として用いられました。

また、帝国内のシリアやエジプトでは「デナリウス」と呼ばれるようになりました。7世紀にシリアとエジプトを征服したイスラム帝国のディナール金貨に継承されます。

ビザンツ帝国が1071年のマンジケルトの戦いにおいてセルジューク朝に敗れてからは、財政難のためにノミスマの純度が落ち始めてしまい、貨幣経済の中心はコンスタンティノープルを離れて西ヨーロッパに映っていきました。

ビザンツ様式の文化

ビザンチン帝国における6世紀頃を頂点とする建築や美術の様式を「ビザンツ様式」と言います。現在のトルコ・イスタンブールにある世界遺産のハギア=ソフィア聖堂はビザンツ様式の代表例です。
(画像:ハギア=ソフィア聖堂)

ビザンツ様式の建築の特色は、ドーム型の屋根とモザイク画による装飾です。中央に大きなドームがあり、その周りに小さなドームが配置されるのが一般的です。建築を彩る壁画は石や陶磁器の破片を埋め込むモザイク画です。(画像:アヤソフィア大聖堂の聖母子のモザイク画)

などの聖人の絵を「イコン」と呼んで崇拝していました。写実的な絵というよりは記号のような絵で、決まりきった表情や服装で描かれています。

ティベリウス帝のソリドゥス金貨に描かれた人物の形や裏面の天使の立像にも、モザイク画に描かれたイコンとの共通点を見出せるのではないでしょうか。

モーリス・ティベリウス帝について

モーリス・ティベリウスは582年から死没する602年までのビザンチン帝国を治めた皇帝です。彼ははじめ、公証人のような公務員としてビザンチン帝国の首都コンスタンティノープルに上りました。

577年の後半には、ティベリウスは軍事経験が全く無いのにも関わらず、軍を率いて戦うことになります。メソポタミアでのペルシャ襲撃や、チグリス川周辺への攻撃などを行い、現在のイラン高原やメソポタミアのあたりを支配していたササン朝に勝利します。582年には皇帝に即位し、ササン朝とのペルシア戦争を勝利で終結させました。

他にも、ドナウ川を超えて遠征に行ったり、イタリア総督府を設立してゲルマン人の前進を阻止したりと、彼の治世は絶え間なく戦争が起こっていました。戦争にはお金がかかるため、財政難にも悩まされます。

602年、彼の政治に不満を抱いたフォカス将軍が王位を奪い、ティベリウスと彼の息子6人を処刑しました。こうしてティベリウスの治世は終わりを迎えます。

ティベリウスは決して無能だったわけではなく、むしろ有能な皇帝であったとされています。当時の伝記などは多かれ少なかれ誇張されている可能性はありますが、ササン朝ペルシアを打ち破るなど軍事において優れた功績を残したからです。

ただし、優れているがゆえに自分の判断を過信していたようです。周囲の意見と異なる場合でも自分の決定を押し通す性格などがあったため、不人気になってしまったのではないかとされています。

まとめ

モーリス・ティベリウス帝のソリドゥス金貨を中心に解説してきました。

ビザンチン帝国のソリドゥス金貨は現存する枚数自体は多いのですが、コインによってグレードに大きなばらつきがあり、グレードが高いものはかなりの高値で取引される傾向にあります。古代コインは一般的に保存状態が悪く、劣化しているものが多いからです。

モーリス・ティベリウス帝について理解を深められる日本語の文献は非常に少ないですが、軍事・政治に優れた皇帝であったことをお分かりいただけたのではないかと思います。今後、値上がりが期待されるコインでもあるので、コレクションに加えることを検討されてはいかがでしょうか。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!