2024.04.8
イギリス
コイン解説&写真
歴史の始まりはこのコインから!「戴冠式典の公式記念メダル②」
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
前回に引き続き「ウィリアム3世とメアリー2世のメダル」をご紹介します。
メダルの基本情報はこちら。
この記事ではこのメダルの表に書かれているウィリアム3世とメアリー2世の統治についてお伝えしていきます。
ウィリアム3世とメアリー2世について
2人はイギリスで唯一、共同統治が認められたことで有名です。彼らが統治する前のイギリスは革命続きで混乱していました。詳しく見ていきましょう。
即位する前のイギリスの状況
イギリスでは1642年から1649年までスチュアート朝が絶対王政を敷いていました。当時は現在のように宗教の自由が無く、国王であったチャールズ1世がプロテスタントを弾圧したことで、宗教的自由を求める人々が立ち上がりました。これがピューリタン革命(清教徒革命)です。
ピューリタン革命によってチャールズ1世は処刑されて王政は倒れ、クロムウェルが共和政を率いることになります。しかし指導者となったクロムウェルが独裁政治を行うようになったため民衆の反感を買い、彼の死後は王政復古となります。
王政復古後は、スチュアート朝のジェームズ2世が国王となりました。
ウィリアム3世の活躍
ここで話をオランダに移します。ウィリアム3世は、1650年にオランダ総督ウィレム2世とイングランド王チャールズ1世の王女メアリー・ヘンリエッタ・ステュアートとの間に誕生しました。イギリスの「ウィリアム」はオランダだと「ウィレム」と読み、ウィリアム3世はオランダでは「ウィレム3世」と呼ばれています。
ウィレム2世はウィリアム3世の誕生後まもなく、天然痘で亡くなります。幼いウィリアム3世がオランダ総督を継ぐことはできず、議会は派閥争いで混乱しました。その間に英蘭戦争が起きたりフランス軍がオランダに侵攻してオランダ侵略戦争が始まってしまいます。
混乱状態のオランダは大半がフランスに占拠されてしまいました。そこで21歳のウィリアム3世がオランダ総督に即位すると、オーストリアやスペインと同盟を結んでフランスに対抗する力を得て、フランス軍を撤退に追い込みました。
この実績から、ウィリアム3世はオランダの英雄としてアンティークコイン界のみならず歴史的にも人気があります。歴史的には、フランスの太陽王ルイ14世の宿敵という位置づけになります。
ウィリアム3世はフランスに対抗するため、英蘭戦争などで戦ったイギリスとの関係の修復を図りました。そこでイギリス国王であったジェームズ2世の娘であるメアリー2世と政略結婚をします。
イギリスの名誉革命
再び話をイギリスに戻します。イギリスではジェームズ2世が国王として統治していましたが、彼はカトリック信者でした。しかし当時のイギリスはプロテスタントが多く、ジェームス2世はプロテスタント信者を政界から追い出すなどの暴挙に出たため、議会との対立を深めていまいます。
そこで議会はジェームズ2世の娘でありプロテスタントのメアリー2世の即位を期待し、すなわちジェームズ2世が亡くなるのを待つ妥協案に傾いていました。ところが1688年にジェームス2世に男子が生まれると、目論見が外れてしまいます。そこで議会は急いでオランダのウィリアム3世とメアリー2世をイギリスに呼びました。
1688年にウィリアム3世がオランダ軍をイギリスに上陸させると、ジェームズ2世はフランスのルイ14世の支援を断って独力で立ち向かおうとします。しかし国王軍は分裂して戦うことができず、各地でも反国王の運動が高まり、ジェームズ2世は亡命します。そしてウィリアム3世とメアリー2世が国王に即位したのですが、無血で国王の交代が実現したのでこの革命は「名誉革命」と呼ばれています。
権利の章典
ウィリアム3世とメアリー2世の最大の功績は、イギリスの立憲政治の基礎を固めたことにあるでしょう。1689年に成立した「権利の章典」は名誉革命でイギリス議会が定めた法律で、ウィリアム3世が承認した権利宣言に基づいています。長年続いた国王と議会の対立を議会の勝利で終わらせ、「王は君臨するが統治しない」という原則を固めました。
権利の章典には議会と国民の自由が書かれており、王であっても議会や国民の自由を否定することはできないとされました。現在の政治にもつながる重要な考え方です。
まとめ
ウィリアム3世とメアリー2世の公式戴冠式典記念メダルと、彼らが活躍した時代のイギリスについて解説してきました。名誉革命によって国王となって共同統治を行い、権利の章典によって立憲政治の基礎を築いた功績には、大国を率いるリーダーらしい姿勢を読み取ることができるのではないでしょうか。
枚数が少なく貴重であり、かつ人気のある国王のメダルなので、今後の値上がりも期待できます。市場に出回る機会がとても少ないので、チャンスがあったらぜひ入手したい一枚です。
みなさんにアンティークコインで幸あれ!