2024.02.9
古代
コイン解説&写真
近年人気が高まっているコイン「プトレマイオス朝エジプト 古代ギリシャ金貨①」
みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。
近年人気が高まっているアンティークコインの一つに、古代コインがあります。古代ギリシャや古代ローマなど、人類が金属の貨幣を発明した頃の作られ、流通していたコインです。
古代コインの大きな魅力は、歪な形や素朴なデザインです。
コインの製造が始まったばかりの頃の作品なので、中世以降のように整ったコインではないのですが、その素朴さが魅力的なのです。綺麗な円形ではなく歪みがあったり、肖像が中心からずれた位置に刻印されていたりと、コイン1枚1枚に個性があります。
古代コインの中でも特に注目されているのが、プトレマイオス朝エジプトの女王アルシノエ2世の肖像が刻まれた金貨「プトレマイオス 古代ギリシャ金貨」です。同時代(古代ギリシャ時代)に使われていたコインの中で最大級の金貨という特徴を持っています。
この記事では、アルシノエ2世の金貨について解説していきます。コインの特徴やアルシノエ2世の人物像を中心に解説していくので、コイン収集の参考にしていただければと思います。
プトレマイオス朝エジプト アルシノエ2世の8ドラクマ金貨の基本情報
プトレマイオス朝エジプト アルシノエ2世の8ドラクマ金貨について、基本情報を整理しておきましょう。
・国:プトレマイオス朝エジプト
・発行年:紀元前180~116年頃
・発行枚数:不明
・素材:金
・直径:約28mm
・重量:約27g
・表面:ベールを被ったアルシノエ2世の横顔
・裏面:豊穣を象徴する2本の角(コルヌコピア)
アルシノエ2世の8ドラクマ金貨の最大の特徴は、コインの大きさと言えます。当時のスターテル金貨は7グラム前後の重量でしたら、この金貨は4倍もの重量があり、かなり大きく重い金貨であったことが分かります。
額面は8ドラクマで当時にしては高かったため、日常生活の中で使うコインではなかったのだろう、と考えられています。
国家の備蓄用として作られた、とする説が有力です。
日常的に使用されていなかったためか、古代コインにしては綺麗な状態の金貨も残っています。状態の良いアルシノエ2世の8ドラクマ金貨は数百万円と古代コインでは破格の価格で取引されることも珍しくありません。まだまだ人気が出始めたばかりなので、今後も値上がりが期待されるコインの一つです。
コインの由来について
アルシノエ2世の肖像が刻まれた8ドラクマ金貨はいくつのバージョンがあるのですが、今回紹介するのは表面に「K」と刻まれた8ドラクマ金貨です。このコインは、プトレマイオス6~8世の時代(紀元前180~116年)に作られたとされています。
アルシノエ2世は紀元前270年または紀元前268年に亡くなっているので、この金貨は彼女の死後に作られました。後述するように力強く国を率いた女王であり、死後は女神とされています。死後もコインの肖像に刻まれ続けるほどの影響力があったのです。
ちなみに表面に刻印されている「K」はカルタゴという都市国家を意味しています。コインを鋳造した場所を表すためのマーク(ミントマーク)で、アルシノエ2世の肖像が描かれたコインには、他にIやOのように見えるマークが刻まれているものがあります。ミントマークが異なるコインを集めるのも良いですよね。
次回はこのコインに描かれているアルシノエ2世についてお伝えします。
みなさんにアンティークコインで幸あれ!