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2024.02.16

ドイツ

コイン解説&写真

近世

羊が特徴のコイン「神聖ローマ帝国(ドイツ) ラムダカット金貨②」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に続き多くアンティークコインのコレクターや投資家に人気があるダカット金貨、中でもユニークな「ラムダカット金貨」についてお伝えします。コインの基本情報はこちらをご覧ください。

表面に隠された発行年当時の一般的なコインには数字で年号が刻まれており、発行年が分かるようになっています。しかし、ラムダカット金貨には表面にも裏面にも数字が無く、いつ発行されたものなのか分からない、と思った方も多いでしょう。実は、暗号のような隠し文字によって年号が刻まれているのです。

表面には羊を囲むように「TEMPORA NOSTRA PATER DONATA PACCORONA」と書かれています。よく見ると一部の文字は大きく刻まれており、時計回りに拾うと「MDCC」となります。MDCCはローマ数字で1700を表しており、ラムダカット金貨の発行年が1700年であることを示しています。

ただし、1700年を中心に作られたのであり、すべてが1700年に作られたわけではありません。

コインが正方形である理由

今も昔も、一般的な貨幣は円形をしています。ですが、ヨーロッパでは1500年代から四角形のコイン(通称クリッペ)が作られるようになりました。

クリッペが作られた背景には、貨幣を緊急で作る必要があったため、円形にする手間を省いたと言われています。その後、円形のコインが一般的になっていく中、形の珍しさから正方形のコインは記念コインとして鋳造されることが多くなっていきました。

1600年代、1700年代のコインには正方形のタイプも多く見られます。

ラムダカット金貨が大量生産された理由

ダカット金貨は貿易用として作られたのですが、発行していたニュルンベルクは貿易が盛んだったわけではありません。また、ラムダカット金貨には32分の1ダカットといったとても細かい額面のコインもあるのですが、どうしてこのような単位のコインが必要だったのでしょうか。

それは、ラムダカット金貨がニュルンベルクのお土産や贈り物として使われることが多く、記念コインのような役割を果たしていたからだと考えられます。ニュルンベルクで金が産出されていたわけではなく、旅行者が金を持ち込み、職人にコインを作らせていたのです。職人はコインを作ることで料金をもらえたので、ニュルンベルクでラムダカット金貨が大量に生産されました。

ニュルンベルクは職人の町で、金細工師も大勢いたため、金貨の大量生産ができたのです。計画的な発行ではなかったため、発行枚数も不明です。

また、旅行者は全員が裕福というわけでもなく、少しの金しか持っていない人もいました。そのため、32分の1ダカットといった細かい額面のラムダカット金貨が作られたのだと考えられます。

まとめ

神聖ローマ帝国時代にニュルンベルクで作られていたラムダカット金貨について解説してきました。可愛らしい羊が描かれており親しみやすいことや、旅行者が縁起物として職人に作らせた記念コインのようなユニークな性質などから、人気が高まっているコインです。

年号が隠し文字になっていることなど、ラムダカット金貨は本当に個性的で、他のコインには見られない特徴を多く備えています。珍しいコインの割に手ごろな価格で購入できることも多いので、ぜひコレクションに加えてはいかがでしょうか。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!