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2024.02.21

コイン解説&写真

インド

単年発行で希少性が高い「インド ヤング・ヴィクトリアのモハール金貨 ②」

みなさんごきげんよう、アンティークコイン投資家の葉山満です。

前回に引き続きインドがイギリスの植民地だった時代の「ヴィクトリア女王の肖像が刻まれている1モハール金貨」当時の時代背景について紹介いたします、その時代についての知識を深めていきましょう。
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バージョンの違い

ヤング・ヴィクトリアのモハール金貨にはいくつかタイプがあり、同じコインでも比較するとデザインに若干の違いがあります。上述したワイオンのイニシャル「WW」が刻まれているかどうかもその一例です。

他には、発行年の「1841」の「4」の横棒の右端がカギのように跳ねているかどうか、「VICTORIA QUEEN」の「VICTORIA」と「QUEEN」が離れているか近いかなどの違い、ヴィクトリア女王のフェイスラインの違い、さらに年号の大きさの違いがあります。バージョン違いでコレクションしたい方やデザインにこだわって収集したい方も多く、モハール金貨のデザインの違いはお問い合わせが多いので、細かいところまでよく確認してみましょう。

東インド会社が発行した金貨

モハールとは、東インド会社が発行した金貨です。他にも東インド会社はルピー銀貨、パゴダ、アンナ、ファナム、キャッシュなどさまざまなコインを発行していたのですが、そもそも「会社が貨幣を発行する」ということ自体に違和感を持たれることでしょう。

もともと東インド会社はアジア貿易を目的に設立されたイギリスの会社です。会社といっても現代の民間企業とは違い、1600年当時の女王であるエリザベス1世から特別な許可を得た特許会社です。植民地の獲得や支配というリスクの高い目的で作られた会社であるため、見返りとして経済貿易の独占権を与えられていました。

よって東インド会社はインドや中国との貿易を独占し、当初は香辛料の貿易を主な業務としていましたが、行政組織の構築、徴税や通貨の発行などインドを統治する機関に変わっていきます。

1677年にはチャールズ2世によって独自の通貨を鋳造する権利が与えられました。1835年にはすべてのイギリス植民地における硬貨は共通であるべきだとする貨幣鋳造法が定められ、インドでは東インド会社のモハール金貨が採用されました。

東インド会社のコインのデザインが優れている理由の一つに、貿易相手となるアジアの国々をコインの美しさで魅了し、貿易を始めてもらうためだったという説があります。現代人をも魅了する彫刻師ウィリアム・ワイオンが手掛けたことも納得できる理由ではないでしょうか。

まとめ

ヤング・ヴィクトリアの肖像が描かれたインドのモハール金貨について解説してきました。発行枚数は多いのですが、良い状態のコインが非常に少ないため、グレードによってはかなり高値で取引されています。

イギリスのコインは既に価格が高騰しきっている感じがありますが、モハール金貨はまだそこまでではないと言えます。ウィリアム・ワイオンが手掛けたコインの中では手ごろな価格で手に入ると言えるので、コレクションに加えてはいかがでしょうか。

みなさんにアンティークコインで幸あれ!